本日は少々、においの話をば。
三連休最終日の月曜日、夕方より編集部に入りまして、
仕事を少々片付けまして、夜10時過ぎ、
自転車で帰宅いたしました。
夏の夜ですね、セミが鳴いてました。
夏には夏のにおいがするように思います。
「何のにおい?」と訊かれますと答えにくいのですが
子供の頃、40日もある長い長い夏休みの間中ずーっと嗅いでいたような
なんとも表現しにくいにおいが夏にはあるように思います。
プールの塩素のにおいなのか、ぼうぼうに茂った草のにおいなのか、蚊取り線香のにおいか…
やっぱりちょっと違いますね、そういうのもそうなのですが、もっとこう・・・
とにかく、夏の空気のにおい、です。
そういえば。
子供の頃よく遊びにいっていた友達の家には、その家独特のにおいが
それぞれありました。
決していやな匂いではありません。それぞれの家族の生活のにおいなのです。
すぐれた漫画作品にも、それぞれにおいがあるように思います。
単に作品の傾向を「におい」と表現しているわけではありません。
たとえば、お気に入りの漫画でかつて何度も何度も読み返した漫画を
実家に帰省した折に10年ぶりぐらいで手にとってぱっとめくったとき、
どんな話だったか思い出すよりも早く、その当時嗅いでいたその作品のにおいを思い出す、
なんて経験、ありません?
・・・・僕の感受性が特別優れているわけはありませんので、多くの方が
「うん、あるある!」ときっと同意されているだろうという前提で話を続けますが――
この漫画作品のにおいの正体は、その作品の持つ
「生活のにおい」なんだろうと思います。
登場人物たちがその世界でそれぞれに暮らしていて、泣いたり笑ったりしている。
そこには毎日があって四季があって食事があって夜があって悲喜こもごもがある。
生活をしている場には必ず、においがあります。
すぐれた漫画作品には必ず、生身の暮らしが存在し、それを読む僕らは無意識に
そのにおいを実感しているのだろうと思います。
子供の頃、友達の家に遊びにいくときに、べつに目的はありませんでした。
そこに誰がいてどんな物があって、他に遊びにくるヤツがいるとすれば誰と誰、
そんなものはもう全部とっくに承知で、そいつの家に行く。
それは、なんとなーくですが、
その家の持つにおいにひきつけられて行っていたようにも思うのです。
漫画の単行本を読み返す行為は、少しこれに似ていると思います。
ストーリーとして何がどうなるのか、そんなものはとっくに知っています。
でも、何度も読み返したくなる漫画というのは、
登場人物の暮らしているその世界のにおいに引き寄せられて、そのにおいを何だかもう一度
嗅ぎたくなって、それで何回もページをめくりたくなってしまう、
そういうものだと思うのです。
good!アフタヌーンの、これまで世に出た5冊ぶんをこの連休中に
飽きもせず読み返していて、ふとそんなことを思いました。
逆に言うと、ですが、
good!アフタヌーンの作品群は、どれもそれぞれに「におい」を持っています。
この先単行本を買っていただいたとして、その後何度も読み返したくなる作品たちだろうと
そう思います。
すぐれた作品であることの、ひとつの証左だろうとも思います。
good!アフタヌーンは今後とも、漫画の「におい」に敏感な雑誌でありたいと
そう思う夏の夜であります。うむ、ポエティック☆